時制と相
時制と相の概念
時制(tense)と相(aspect)はどちらもある単語が言及している時間を規定する概念です。
時制は時間軸上で基準となる一点を指し示すのに使い、相はその基準点の周辺で動作がどのように起こっているかを表します。
日本語における時制と相の例
| 相\時制 |
過去時制 |
現在時制 |
| 完結相 |
みかんを食べた。
|
みかんを食べる。
|
| 継続相 |
みかんを食べていた。
|
みかんを食べている。
|
過去時制・完結相である「食べた」は、過去という時間を基準とし(= 過去時制)、基準時間の周辺で起こった「食べる」という動作全体に言及しています(= 完結相)。
語末の「た」が過去時制を表し、何もつけないことで完結相を表しています。
これは図にするとより分かりやすいでしょう。
この図は、各単語が表す時制と相の一例です。
たとえば「あなたはみかんを食べますか?」と聞いた時、文脈によって「目の前にあるみかんを食べるか聞いている」こともあれば「習慣的にみかんを食べるか聞いている」こともあるでしょう。
サトゥキタンでは時制と相が独立して厳密に定められているため、文脈によって意味が変わることはありません。
ただし、厳密には規定されていないニュアンスが文脈によって変わることがあります。
時制と相の表し方
時制
サトゥキタンには過去時制(past tense)、現在時制(present tense)、未来時制(future
tense)の3種類の時制があり、接尾辞で区別されます。
なお、時制の接尾辞と相の接尾辞の両方をつける場合、通常は時制の接尾辞を後につけます。
| 接尾辞 |
時制 |
直感的なイメージ |
| なし |
現在時制 |
~する |
| ta (タ) |
過去時制 |
~した |
| ka (カ) |
未来時制 |
~する(だろう) |
- gistas
- ギsタs
- 学ばれた(過去)
- gis
- ギs
- 学ばれる(現在)
- giskas
- ギsカs
- 学ばれる(未来)
上記の翻訳は、日本語の単語と正確に対応するものではないことに注意してください。
相
サトゥキタンの相は完結相(perfective aspect)、完了相(perfect aspect)、継続相(continuous
aspect)、進行相(progressive aspect)、終止相(completive aspect)、開始相(inchoative
aspect)の6種類です。
相の決まり方は時制に比べると複雑です。
単語に相を表す接尾辞がついていればその接尾辞が表す相になり、接尾辞がない場合は意味種によって決まります。
なお、一部の機能語は相自体を定義しますが、それ以外の機能語・名称語・補助語は相に影響しません。
| 接尾辞 |
過程語 |
結果語 |
状態語 |
直感的なイメージ |
| なし |
完結相 |
完了相 |
継続相 |
~する、ずっと~である |
| so (ソ) |
進行相 |
進行相 |
進行相 |
その瞬間は~である |
| ti (ティ) |
終止相 |
終止相 |
終止相 |
~し終わる |
| ki (キ) |
開始相 |
開始相 |
開始相 |
~し始める |
単語の中には、接尾辞として使うと単語の意味種を変える機能を持つものがあり、これは結果的に相にも影響します。
たとえば状態語「ni (ニ) / いつも~している」を接尾辞としてつけた合成語は、(元の意味種が何であれ)状態語になります。
- gissos
- ギッソs
- 学ばれている(進行)
- giskis
- ギsキs
- 学ばれ始める(開始)
- gisnis
- ギsニs
- 学ばれている(習慣)
上記の翻訳は、日本語の単語と正確に対応するものではないことに注意してください。
時制と相の意味付け
サトゥキタンにおいては、時制と相によってその単語が言及している時間的範囲が厳密に決まります。
サトゥキタンにおける過程語・結果語・状態語は通常、時間的な幅を持った動きや状態について言及します。このセクションでは次のような文字を使って時制と相の厳密な定義を説明します。
-
文脈上の現在時刻
-
単語が表す出来事が起こっている時間的範囲
-
単語が言及している時間的範囲
時制
時制は、単語が言及する範囲が時間軸上のどこにあるかを表します。
過去時制 (接尾辞 ta)
単語が言及する時間的範囲は、その全体が過去にあります。
イメージ: 昨日みかんを食べた
現在時制 (接尾辞なし)
単語が言及する時間的範囲は、現在をまたいで未来と過去に広がっています。
通常、これは現在または近い未来に終わる出来事か、未来永劫続く出来事(状態や性質)に対して使われます。
イメージ: 私は数学を学んでいる
未来時制 (接尾辞 ka)
単語が言及する時間的範囲は、その全体が未来にあります。
イメージ: 明日は京都に行く
相
相は、単語が言及する範囲と出来事全体の範囲の関係性を表します。
完結相 (過程語・接尾辞なし)
単語は完結した出来事全体に言及します。
イメージ: 家から学校まで歩いた (出発から到着まですべてに言及)
完了相 (結果語・接尾辞なし)
単語は、ある瞬間から始まり(他に言及がなければ)未来永劫続く出来事全体に言及します。
結果語には通常ペアとなる過程語があるため、「ある出来事が終わった後の状態」に言及しているとも言えます。
イメージ: 窓ガラスが割れている (割れた過去があり、割れた状態が続いていることに言及)
継続相 (状態語・接尾辞なし)
単語は、(他に言及がなければ)過去から未来まで続く普遍的な出来事に言及します。
イメージ: 一般的にりんごは赤い (時間に依存しない普遍的な性質に言及)
進行相 (接尾辞 so)
単語は、出来事全体から短い一部を切り取った範囲に言及します。
出来事全体がどのような時間的範囲を持つかについては言及しません。
イメージ: 彼は今走っている (今この瞬間についてのみ言及)
終止相 (接尾辞 ti)
単語は、出来事全体から終わる間際の短い一部を切り取った範囲に言及します。
出来事全体がどのような時間的範囲を持つかについては言及しません。
イメージ: 料理を作り終える
開始相 (接尾辞 ki)
単語は、出来事全体から始まった直後の短い一部を切り取った範囲に言及します。
出来事全体がどのような時間的範囲を持つかについては言及しません。
イメージ: たった今、雨が降り始めた
時制と相の組み合わせ
完了相と継続相は、他に言及がなければ未来永劫続く出来事全体に言及します。
一方、過去時制は言及する範囲の全体が過去にあることを表しており、暗黙的に出来事の終わりに言及しています。
そのため、この2つを組み合わせて使うと「ある時点まで続いていたが現在はそうでない」という意味になります。
例えば日本語では、「この家は昔から赤かった」 と言う場合と 「この家は昔は赤かった」
と言う場合で、動詞の活用は同じですが、後者のみが「今は違う」というニュアンスを持ちます。
サトゥキタンではこの2つを現在時制(= 現在まで続いている性質)と過去時制(過去に終わった性質)で言い分けます。
相に関連する接尾辞
ni(ニ) / いつも~している
日本語では動作全体に言及する場合 (今から朝食を食べる)
と習慣に言及する場合 (日本人は米を食べる)
で動詞の活用が変わりませんが、サトゥキタンでは後者に接尾辞
ni をつけて区別します。
習慣は「習慣相」として相に組み込まれる場合もありますが、サトゥキタンでは「いつも~している性質」という継続相として扱います。
同じように単語を状態語に変える接尾辞には以下のような例があります。
- ge(ゲ) / ~できる
- pi(ピ) / ~であるべき
- pipi(ピピ) / ~でなければならない
- poni(ポニ) / どうぞ~してください
時刻に言及する補助語
補助語・補助目的語を使うことで、単語が言及する範囲
を明確にすることができます。
これらの補助目的語は相が本来表す「未来永劫続く」ような性質よりも優先されるため、
「この家は明日までは赤い」
のように、継続相を使いつつも終わりのある出来事を表すことができます。
nav(ナン) / ~の時刻に
時刻を表す名詞を修飾して補助目的語を作り、単語が言及する範囲
に含まれている時間的位置を示します。
tev(テン) / ~まで
時刻を表す名詞を修飾して補助目的語を作り、単語が言及する範囲
が終わる時間的位置を示します。
ただし tev は概念的・空間的な終点を表すこともあるため、紛らわしい場合は
nastev (ナsテン)を使って時刻であることを明確にします。
kev(ケン) / ~から
時刻を表す名詞を修飾して補助目的語を作り、単語が言及する範囲
が始まる時間的位置を示します。
ただし kev は概念的・空間的な始点を表すこともあるため、紛らわしい場合は
naskev (ナsケン)を使って時刻であることを明確にします。